MSE撹拌翼 Q&A

Q1.MSE撹拌翼とは?
MSE撹拌翼は、多孔板状の混合エレメントの積層体、ホルダー、リング板、ブラインド板等から構成される翼本体に、回転軸を取り付けたものです。
MSE撹拌翼を撹拌槽内で回転させると、翼を構成する混合エレメント積層体内部に保持されていた流体が遠心力により翼外周部に吐出され、翼上下から翼の中空部に流体が吸い込まれます。吸い込まれた流体は再び翼外周部から吐出されますが、その際に混合エレメント積層体を構成する混合エレメントの多数の貫通孔が連通してできた、複雑でありながら規則正しく整列した流路を流れる際に、分割・合流、せん断等の作用により効率的に混合されます。

Q2.MSE撹拌翼の特徴について
MSE撹拌翼は、羽根タイプの翼のように偏平状の板が突出しておらず、外観はほぼ円筒形状です。そのため、液面の乱れが少なく、マイルドに撹拌することが可能です。その他に以下のような特徴があります。

  1. 変動が小さく、泡の巻き込みが少ない
    流体をマイルドに撹拌することができます。
  2. 粒子の巻上や気体の吸込み等の撹拌が可能
    ホルダーの位置やブラインド板の有無により、粒子の巻上げや気体の吸込み等多彩な撹拌が可能になります。
  3. 混合エレメントの積層枚数の増減により、撹拌動力や流体の循環流量の調整が可能
    混合エレメントの積層枚数が変更が可能なため、撹拌動力や流体の循環流量を調整できます。従来の翼と置き換えた場合に、動力に余裕があればさらに混合エレメントを追加することにより、流体の循環流量を増加させて効率的に撹拌することができます。
  4. 混合エレメントの形状の変更により、流動特性の変更が可能
    例えば、混合エレメントの孔数を増加させて分割・合流の回数を増加させ、反応系の撹拌において未反応物質の接触面積・接触回数を増加させることができます。
  5. 回転が安定しているため回転軸の振動が小さい
    外観形状が略円筒形であるため、羽根タイプの翼のように偏平状の板が流体の抵抗を直接的に受けず、回転が安定していて回転軸の振動が抑制されます。

Q3.MSE撹拌翼の動力特性について
内径200mm、邪魔板4枚の撹拌槽を使用して、液高さ200mmの条件で外径100mmのMSE撹拌翼と6枚平羽根ディスクタービン翼(以下、「DT翼」。)との撹拌動力を比較しました。結果は、DT翼の羽根高さと同じ混合エレメントを積層した場合、動力は約40%になりました。従いまして、DT翼の羽根高さの2.5倍程度積層にすることによりほぼ同等の動力になります。

Q4.撹拌可能な流体の粘度について
現在までの最も高粘性の液体を撹拌した実績として、粘度約20000cPと1000cPの液体を1:1として容器に入れたものを、外径150mmのMSE撹拌翼により良好に撹拌できた事例があります。

Q5.標準品について
標準品は外径40、50、60、80、100mmのものがあります。以下に仕様についてまとめています。特注品として外径100mm超のものも製作可能ですので、ご希望がありましたらお問合せください。最大外径320mmの実績があります。
詳細はこちらをご覧ください。
先端にネジ加工された回転軸が付属しており、XRB-40、50、60については外径8mm×長さ300mmの回転軸が、XRB-80、100については外径10mm×長さ300mmの回転軸が付属しています。回転軸の材質は、SUS304とSUS316がありますので、注文時にご指定ください。
なお、特注で回転軸を止めねじで固定するタイプも製作可能ですので、既設撹拌翼との交換や、撹拌翼の取り付け位置を変更したい場合にはお問い合わせください。

Q6.追加の混合エレメントについて
追加部品として、混合エレメント5組とボルト・ナットがセットになったものを販売しています。この場合のボルトは混合エレメント10組の積層高さに対応する長さとなっていますので、追加部品の購入により10組の積層高さのMSE撹拌翼とすることができます。

Q7.材質について
翼部の標準品の材質はSUS316ですが、PTFEやチタン等種々の材料での製作が可能です。ご希望の材質がありましたらお問い合わせください。回転軸については、SUS304製とSUS316製があります。

Q8.混合効率について
MSE撹拌翼とDT翼について撹拌動力が等しくなるように回転数を調整し、90%グリセリン水溶液に塩化ナトリウム粒子を溶解させて、所定の電気伝導度に到達する時間を混合時間として混合速度を比較しました。その結果、MSE撹拌翼はDT翼に対して混合時間が約20%短縮されました。この時の回転数はMSE撹拌翼が400rpm、DT翼が500rpmでしたが、回転数の影響を排除した無次元混合時間(所定の電気伝導度に達するまでの回転の総数に相当。)で比較すると、MSE撹拌翼は約38%小さい値となりました。

Q9.粒子の巻き上げ撹拌について
MSE撹拌翼は、翼中央に中空部があり、そのため粒子を中空部から吸い込んで巻き上げることが可能です。混合エレメント積層体内部では複雑な流路が形成されていますが、ある程度の大きさの粒子は流路を通過して吐出されますので、粒子の巻き上げ撹拌が可能です。中空部に繋がるノズルを設置することにより、翼が槽底から離れていても粒子を巻き上げることが可能です。粒子の巻き上げの状態は、翼外径、積層枚数、回転数等により変わりますので、ご希望の方は無償の貸出サンプルによるテストをお勧めします。

Q10.気体の吸込み撹拌について
回転軸が接続されるホルダーを翼下部に設置することにより、MSE撹拌翼の中空部の上部が開放されますので、ある程度の回転数まで上げれば気体を吸い込むことが可能になります。そのため通常の気液撹拌のようにスパージャー等で気体を供給することなしに、気体を液中に分散させることができます。気体の吸込みや分散の状態は、翼外径、積層枚数、回転数等により変わりますので、ご希望の方は無償の貸出サンプルによるテストをお勧めします。

Q11.反応系の撹拌への適用について
ポリスチレン重合反応において、MSE撹拌翼と羽根タイプの翼であるかい十字翼により撹拌して生成ポリスチレン粒子の粒度分布の比較を行った結果を以下に示します。
図から分かるように、MSE撹拌翼では粒子径は大きいですが、粒径分布がシャープで単分散の粒子が得られています。これに対して、かい十字翼の場合はピークの粒径は小さいですが、2つのピークがあり各々のピークの個数はMSE撹拌翼より小さくなっています。
以上の理由として、撹拌槽内および翼近傍のせん断応力分布の違いが挙げられます。MSE撹拌翼では、翼内部の各混合エレメントの貫通孔により形成される複雑かつ規則正しく整列した連通流路内に、ほぼ一様なせん断応力場が形成されていますが、羽根タイプの翼であるディスクタービン翼では翼周辺のせん断応力は大きいもののその他の部分では小さく、広い範囲で分布しています。また、MSE撹拌翼では撹拌槽内の大部分の流体が翼内部の連通流路を通過しますが、ディスクタービン翼では羽根周辺の流体とその他の流体では羽根から受ける力の差が大きく、羽根からの距離により流れも異なると考えられます。
以上の理由により、MSE撹拌翼によれば撹拌槽内部の流体の流動状態を制御することが可能であり、これにより単一でシャープなポリスチレン粒子の粒度分布が得られたものと考えられます。

Q12.混合エレメントの孔配置について
混合エレメントの孔の配置により分割・合流の回数を変更したり、粒子が含まれる流体を取り扱う場合には孔を大きくすることが可能です。特に反応系の撹拌の場合には、分割・合流の回数が変化して反応効率に影響を及ぼすことが考えられます。例えば、外径同一で、内径をほぼ同じとして半径方向の分割数を変更し、流動解析及び動力測定についての結果をまとめた以下の表が参考になります。

分割回数 2 3 4
外径/内径[mm] 100/50 100/48 100/49
循環流量(解析)[L/sec.] 3.87 3.53 3.24
分割数×循環流量[L/sec.] 5.81 8.83 11.34
動力(実測)[kW/m3.liq.] 1.468 1.397 1.290

図及び表に示したように、外径は100mmで内径は48~50mmの範囲でほぼ等しく、半径方向の分割回数を2~4回まで変更しています。翼吐出流量は流動解析によるものですが、半径方向の分割回数が多くなることにより半径方向への流動抵抗が大きくなりますので、循環流量は分割数2回では3.87/min.ですが、4回では3.24/min.と約16%減少しています。しかしながら、反応には(循環流量×分割回数)が影響すると考えられ、そうすると分割回数4回の混合エレメントが適していると考えられます。本件に関連して、山口大学創成科学研究科の佐伯教授による、MSE撹拌翼によるBDF製造におけるメチルエステル化反応率向上についての発表(*1)があります。
*1):貝出、佐伯、化学工学会第50回秋季大会講演要旨集、FF120 (2018)

Q13.その他MSE撹拌翼が適している用途について
Q8で述べたように、MSE撹拌翼では、撹拌槽内の大部分の流体が一様なせん断場が形成された翼内部の連通流路を通過しますので、均質な混合を実現しやすいといえます。そのため、例えば粒子の沈殿防止のために撹拌翼による撹拌が必要な場合において、過混合により液性状が変質してしまうような場合の撹拌にも適していると考えられます。

Q14.洗浄について
右の写真のようにボルト・ナットを一組だけ残して取り外し、残した一組のボルト・ナットを緩めて、混合エレメントを自由に動く状態にします。この状態で水等により洗浄すれば、容易に洗浄することができます。超音波洗浄機の使用によりさらに効果的に洗浄できます。

Q15.現在使用している翼のMSE撹拌翼への交換について
例えば、ディスクタービン翼をMSE撹拌翼に交換する場合では、こちらで述べたようにMSE撹拌翼の方が動力が小さいので、回転軸径が同じであればそのまま交換することが可能です。その状態で動力に余裕があるようであれば、さらに混合エレメントの積層枚数を増加させることにより、MSE撹拌翼を通過する流体の流量を増加させることにより撹拌効率を上げることが可能になります。
なお、こちらで述べたように、MSE撹拌翼は略円筒形状のため回転軸の振動は羽根タイプの翼と比較して抑制されますが、重量は羽根タイプの翼と比較して増加する場合が多いので、軸の振動については確認が必要です。

Q16.貸出品について
全てのサイズのMSE撹拌翼について無償の貸出サンプルを準備していますので、ご希望の際はご連絡ください。外径100mmのものについては、貫通孔や内径サイズを変更したものを多種類揃えています。ご希望の場合はご連絡ください。

 


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